| 牛乳 | 1000ml | 200円 |
|---|---|---|
| お茶 | 500ml | 200円 |
| 水 | 500ml | 250円 |
一般に、日本の大部分の人々は、牛乳がどのように作られているか知りません。牛乳のパックに緑の牧場や青い空が印刷されているせいで、牛は広々とした牧場で草を食べていると信じているようです。けれどもこれはまったく事実に反しています。牛の一生とはどういうものか、時には牛の立揚になって考えてみてはどうかと思います。もしあなたが牛だったら、こんな生活をしたいですか?
日本では、ほとんどすべての子牛は狭い牛舎の中で生まれます。どんなに狭く汚い牛舎で生まれたとしても、誕生したばかりの赤ちゃんほど愛くるしい生きものはありません。けれども、その後子牛がたどる運命を知るとき、「生まれない方が幸せだったのでは…」と思ってしまうのです…。
牛も人も哺乳動物(母親のお乳で赤ちゃんを育てる動物)です。母牛は、子牛が生まれるとその肌をなめてきれいにしてやり、母乳を飲ませます。出産直後の初乳には病気に対する免疫が含まれており、これを飲むことで子供は丈夫に育つことができます。
しかし、近代畜産では、牛の哺乳動物としての生理や習性はまったく無視されています。母牛は狭い牛舎に首を固定されてつながれたまま、ほとんど身動きできない状態で出産し、振り返ってわが子の体をなめてやることもできず、その姿を見ることさえままならないのです。母牛に代わって人が濡れた子牛の体をぬぐい、すぐに母牛から引き離します。
そして、子牛に与える初乳(病原体に対する免疫が含まれている)は母牛の乳首からではなく、人が絞ったものをバケツから与えます。いつまでも母乳を飲ませると不経済だということで、5~10日くらいで母乳から代用乳・人工乳に切り替えられます。ちなみに、この代用乳の中に、かつてはかの悪名高い「肉骨粉」が含まれていました。日本で発生した狂牛病の原因は、この代用乳によるものだという指摘がなされています。
人も含めて哺乳動物の赤ちゃんは本能的に母親の乳首を吸おうとします。しかし、生まれてすぐに母牛から引き離されバケツで人工乳や代用乳を飲まさせられる子牛は、この本能が阻害されるため、いつも吸いたいという気持ちを抑えることができません。そのために、乳首に似た何か飛び出ているところや仲間の子牛の臍帯、耳などを吸おうとします。
生まれた子牛がオスの場合は、肉用にされるため、生後1週間から1ヶ月くらいで、生まれた牛舎からトラックに乗せて運び出されます。幼い子牛にとっては環境の激変や長距離輸送はたいへん激しいストレスとなります。農家ではオスの子牛には母親の初乳もろくに飲ませないらしく、死亡率が極めて高いと言われます。
牧場で見る牛に角を見かけることはほとんどありません。生後1ヶ月以内に、「除角」といって、角の出る角根部を電気ごてや薬剤で焼いてしまうのです。幼い子牛にはたいへんな苦痛です。
母牛は、出産後すぐにまた人工受精によって妊娠させられます。母牛はほぼ年中妊娠状態 におかれ、乳を搾り取られることになります。 (搾乳の停止期間は次の出産の前2ヶ月間のみで、残りの約300日が搾乳期間)
母乳は、牛の血液から作られ、子牛の成長に 必要なミネラルや養分をじゅうぶん含んでいます。しかしこれを子牛にいつまでも与え続けて いては人間の取り分がなくなるため、生まれた直後から母子を引き離し、子牛には人工乳を与えます。
母牛は我が身のそれこそ骨身を削ってお乳を出しているので、1日に3回も搾ったりすると、 母体の骨からカルシウムが奪われ、足の骨が弱 くなって立てなくなったりします。
また、乳牛は、搾乳が始まるとほぼ死ぬまで牛舎の中につながれたままとなるので、運動不足で足も細くなり、重い体重を支えきれなくなって、しばしば関節炎を起こします。関節炎で立てなくなった牛は、トラックに乗せてと畜場まで運ぶことが困難なため、そのまま水や餌を与えず衰弱死させることもあります。(『ALIVE』38号記事)
牛の本来の食べ物は草で、繊維質の固い草や薬を消化するために胃袋は4つもあり、反すうしながらゆっくり消化します。ところが、早く成長させ早く肥らせ、より多くの乳を搾り取り、早く出荷し、より大きな利潤を上げようという経済効率主義は、このような牛の生理を無視します。トウモロコシ、大豆、大麦などの穀物を中心とした高タンパク高カロリーの濃厚飼料を大量に与えることによって、乳量と乳脂肪分が増大します。
飼育の手引き書を見ると、乳量が年間5000キログラム以下の牛は淘汰(殺処分)することと書かれています。乳脂肪分は3.5%以下になると出荷価格がぐんと落とされます。しかも、家畜にたべさせる穀物飼料の大部分は、海外からの輸入でまかなっています。特にアメリカでは遺伝子組み替えトウモロコシなどを大量生産し、それを飼料として販売しています。
酪農家は乳量が多くなれば収益もあがると考え、消費者の方も乳脂肪分の高いミルクを好むため、牛に穀物を主とした濃厚飼料を与え続ける習慣は、いつまでたっても止むことはありません。これに動物蛋白も加えればもっと生産性があがるだろうと、悪名高い「肉骨粉」まで与えられてきたのです。肉骨粉というのは、牛やブタ、ニワトリなど食用にする部分を取り去った後の廃棄物や病気で死んだ動物の肉などを粉砕したものです。
また本来、草食の午が、穀物や動物性飼料などを食べさせられるため、食べたものが消化せずに胃に滞る、異常発酵するなどの消化器病がまんえんすることになります。粉砕した濃厚飼料ばかり与えられていると、異常行動も起こりやすくなります。草を食むという習性が満たされないために、繰り返し口の回りをなめたり、柵や餌入れなどをひっきりなしになめ続けたりするのです。
動物園でひんばんに見られる野生動物の異常行動が、彼らよりもさらに狭い畜舎に閉じこめられている家畜たちに起こるのは、不思議ではありません。
乳牛を1頭養うためには約1ヘクタールの草地が必要です。日本では今、500万頭近くの牛が飼育されているのに、実際の草地は80万ヘクタールです。従って大多数の牛は牧場ではなく狭い牛舎にぎゅう詰め状態で、穀物による濃厚飼料を食べさせられていることが、この数字からもよくわかります。
日本が輸入している飼料用トウモロコシは平成12年度で約1200万トン。これは日本人1億2千万人が食べている自給率100%のコメに匹敵する量です。純国内産濃厚飼料の自給率はわずか10%です。牛たちの胃が悪くなるほど、トウモロコシや大豆、大麦などの穀物が飼料とされている一方で、世界では明日食べる穀物さえなく飢えている何億という人々が存在します。この矛盾に悩まずにはいられません。それほどまでにして、私たちは安い牛乳を飲む必要があるのでしょうか。牛が骨身を削って絞り出している牛乳の価格は、ペットボトルの水1本より安いのです。
人間の手間暇を省き、餌の量を管理するために、牛たちの首はスタンチョンという首かせをはめられるか、短い綱で柱にくくりつけられます。こうなると首を回して振り向くのがやっとで体の向きを変えることさえできません。
一定の位置に糞尿が落ちるので掃除がしやすいということになりますが、中には糞尿の掻き出しをいいかげんにしているため、床が汚れ放題の牛舎もあります。そこに牛が座るため、しっぼから下半身がどろどろ、それが下半身にこびりついて衛生状態も最悪です。また、コンクリートの床が滑って牛がころぶこともあります。
糞尿のついたしっぼが搾乳のときにじゃまだというので、しっぼを切断する農家さえあります。
また、大量の贅尿は畜産廃棄物として環境汚染を引き起こしています。
メス牛は生後1年くらいで人工授精が施され、人間と同じく9ヶ月で出産しますが、母体が休む間もなく次の人工授精が行われます。牛の生理を無視したこのような過剰出産、過剰搾乳は、母牛の体から健康を維持するための養分を奪い続け、体力を失わせていきます。
その結果として、乳牛はわずか5~6年で「老廃牛」とされてしまうのです。ちなみに肉牛の場合はさらに短く2~3年でと殺されます。
午に限らず、食用の畜産動物は「天寿を全う」することがありません。若くて「生産性」の高いうちにと殺した方が経済効率が高いからです。また、不自然な飼育方法のせいで病気が多発することも理由の一つと考えられます。
「廃牛」ということになると、農家はばくろうと言われる仲買業者に牛を売ることになり ます。どんなに劣悪な牛舎であったとしても、トラックの荷台に追い立てられ、長時間水も餌も与えられず、と畜揚に揺られていく不安に比べればまだましでしょう。
と畜場では朝早く各地から牛を満載したトラックが次々とやってきます。中には自分の運命を知ったのか必死にあばれて抵抗する牛もいます。涙を流す牛もいます。私は、心ある人は一生に一度はこのと畜場を見学すべきだと思います。(ALIVE19号参照)
動物の固有の生理、習性を無視した、経済効率一辺倒の飼育方法は、動物たちに大きなストレスと苦痛を与え続けています。その結果として、牛たちは体の具合が悪くなり、体力が衰え、病気がちになります。そのために医薬品が大量に投与されることになり、経済効率が落ちるばかりか、結局のところ動物性食品を口にする人々も健康を損なうという悪循環に陥っています。
現在、このような苦い経験を通じ、集約畜産は、時がたつと経済的に利益よりも損失を高めるばかりだということがようやく知られるようになってきました。
畜産動物が健康であるためには、その福祉を向上させなければいけないということも理解されるようになりつつあります。家畜の福祉は、1966年に英国のプランベル委員会が出した「5つの自由」という概念で知られています。
1.飢えと渇きからの自由、
2. 不快からの自由、
3.痛み、傷、病気からの自由、
4.通常行動への自由、
5.恐怖や悲しみからの自由
動物(人も含め)はみな、このような自由を求めています。動物の生理、習性、生態を理解し、その必要とするところをできる限り充足させてやることが、福祉の向上となります。
畜産動物の健康と福祉をはかることは動物をよりよい状態にしてやるばかりでなく、人間自身の健康のためにも必要なことなのです。
現在、日本の畜産農家は減少しつつありますが、その理由は、労働時間が長く仕事がきつい、コストがかさみ収益があがらないなどによるものです。朝晩2回の搾乳は一日も休むことができず(すぐに乳房炎になる)、つなぎ飼いの牛舎では大量の糞尿の掻き出し、堆肥化の作業もしなければなりません。大きな体の牛に食べさせる大量の餌の買い付けでは、輸入の濃厚飼料は穀物相場の変動で急騰に翻弄され、動物用医薬品の購入費もかさみます。販路はすべて大手流通企業にまかせてきたために、原乳は安く買いたたかれ、「中間搾取」がひどく、しかも、農業政策の失敗で年々乳価は暴落し、農家の赤字はかさむ一方です。
この解決策として、新たな設備投資、頭数増加、規模拡大で乗り越えようとするために、ますます労働はきつくなるという悪循環。それでも利益が出ればまだましですが、負債はかさむ一方で、孫子の代まで返済義務が課せられるという状態で、離農も年々増えています。
また、飼育頭数の拡大は当然のことながら、大量の糞尿を生み出し、その処理問題を引き起こしてしまいました。家畜の糞尿は河川に流れ込み、深刻な水質汚染や衛生問題となっています。来年から処理施設の設置が義務づけられますが、その費用がまた経営を圧迫するのです
これまでひたすら規模の拡大を推奨してきた政府(農水省)は、このような集約型の酪農が破綻しつつあることをようやく認識し始めました。
新農業基本法は、従来型の農業・畜産業の転換をはかり、「農業の多面的機能」を打ち出しています。有機農業、食の安全と環境保全、環境教育の場の提供、生物多様性の維持などがその多面性とされています。
しかし、母牛の血と涙の産物である牛乳が、 「水より安い」状態である限り、すべては絵に描いた餅にすぎません。大量生産、大量消費は、 安全でおいしく環境も汚染しない牛乳の生産と矛盾しています。日本人はこれほど大量に牛乳を飲む必要はまったくないのです。
消費者みなが問題に気が付き、牛乳をがぶ飲みする悪習を止めることしか、真の解決の道はないと信じます。